いまある社会関係を活かした開発を目指して

エチオピア南部の半乾燥地ボラナ県などで学んだことを、忘れてしまわないうちに…。No Day But Today / Carpe Diem

(8) ヤベロ郡とアレロ郡の村での参加型ワークショップ

コミュニティ・レベルの参加型ワークショップ

 2012年7月28日から10月8日に掛けて、5. マルカ・ソーダ郡、6. ヤベロ郡、7. アレロ郡、8. ダス郡の4郡16村で、コミュニティ・レベルの参加型ワークショップを実施した。ただし衝突が収まるまでヤベロ郡から出るのは危険という判断となったため、ヤベロ郡以外のコミュニティ・レベルの参加型ワークショップや聞き取り調査を1ヶ月以上中断・延期することになった。筆者も予定を変更し、8月中旬に一旦帰国した。

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アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニで(2012年10月10日)

ヤベロ郡Areri村Chana Dikaゾーニでの問題分析

 帰国直前の8月10日(金)-11日(土)に実施したヤベロ郡のAreri村Chana Dikaゾーニ(一つの村に3つ置かれているゾーニの一つ)における問題分析の結果は下記の通りであり、家畜のための牧草や飲水の不足の重要度が高くなった。

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ヤベロ郡Areri村Chana Dikaゾーニの問題分析結果(2012年8月10日)

 またワークショップに参加した83名のうち条播をしていると回答したのは2名だけで、散播が72名であった。女性の参加者は35名いたが、学校教育を受けた人は皆無であった。男性48名についても中学以上は5名、小学校が4名と予想外に低い数字であった。一方、農地の大きさが6ティマド(6timad = 1ha)を超えるのは83名中6名だけで、3ティマド(0.5ha)の15名が最も多く、以下6ティマド(1ha)が13名、1ティマドと2ティマドがそれぞれ11名などであった。牛の所有頭数は70名(約85%)までが5頭までで、うち最も多い23名が2頭を所有していた。

 状況が落ち着き、また村に入ることが可能になったため、9月26日(水)に再度エチオピア入りし、10月8日(月)にはボレナ県アレロ郡のHallona村Midanuゾーニ、10月10日(水)には同郡のFuldowa村Dambi ゾーニで参加型分析ワークショップを実施した。Midanuゾーニでは56名(うち女性28名)、Dambi ゾーニでは62名(うち女性18名)の住民の参加を得た。

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アレロ郡Hallona村Midanuゾーニでのワークショップ風景(2012年10月8日)

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アレロ郡Hallona村Midanuゾーニでのワークショップ風景(2012年10月8日)

アレロ郡Hallona村Midanuゾーニでの問題分析

 アレロ郡Hallona村のMidanuゾーニの問題分析では、「乾季に村をあげて移動しなければならないこと」が最重要課題とされた。Haro Midanu(ため池)が乾季には枯れてしまい、人々の飲み水がなくなるためである。家畜の移動は当然のことと考えている人たちも、女性・子どもの移動は何とかやめたいという。また二番目の重要課題として男性では「健康・保健」が、女性では「家畜がたくさん死ぬこと」があげられた。保健ポストのある村の中心までは歩いて4時間(病人を運ぶとなると6時間)掛かること、また村には伝統的産婆さんしかいないため出産関連の疾病が多いためとのことだった。

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アレロ郡Hallona村Midanuゾーニの問題分析結果

 家畜が死ぬことの原因としては「長距離移動しなければならないこと」が第一の原因としてあげられた。Midanuゾーニでは教育水準が驚くほど低く、ワークショップ参加者56名のうち正規教育を受けたことがあるのは僅か2名(中学校と小学校、ともに男性)のみで、54名はまったく学校に行ったことがなかった。読み書きができると答えたのは4人、読めるが書けないと答えたのが1人で、識字率も1割を切っていた。これは例えば1999年にケニア北部の半乾燥地バリンゴ県の村々で参加型ワークショップを行ったときの結果に比べても、遙かに低いものである。

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アレロ郡Hallona村Midanuゾーニでのワークショップ風景(2012年10月8日)

アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニでの問題分析

 アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニの問題分析では、最重要課題は男女とも「家畜がたくさん死ぬこと」、二番目は「健康・保健」、三番目が「穀物の収穫が少ないこと」であった。Midanu ゾーニでは「穀物」は女性でも5番目、男性では最下位であったことから、Dambiゾーニの方が耕作に対する意識が高いことがわかる。教育水準でも参加者62名のうち、高校以上が2人、中学が3人、小学校に行った人11人(ただし女性参加者18人では小学校1年が1人だけ、読めると答えたのもその1人だけ)、また識字率でも読み書きができる人が13人、読めるが書けない人が4人と2割は超えていた。

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アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニの問題分析結果

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アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニでのワークショップ風景(2012年10月10日)

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アレロ郡Fuldowa村Dambiゾーニでのワークショップ風景(2012年10月10日)