いまある社会関係を活かした開発を目指して

エチオピア南部の半乾燥地ボラナ県などで学んだことを、忘れてしまわないうちに…。No Day But Today / Carpe Diem

(15) さらに聞き取りを続ける

アレロ郡の村でのコミュニティ・ベースの活動

 3月29日(金)はアレロ郡のGada村の話を聞いた。ただし川が増水していたため、Gada村のセンターには行くことができなかった。

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Gada村に行く途中の道で

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Gada村のセンターの手前の川

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Gada村のセンターの手前の川

 「Haro Dubaの漏出を防ぐための工事が2週間前から始まっており、3つのガレが参加している。Gare Labu Wale、Gare Jirenya Gada、Gare Haro Buleの3つで、火曜日、水曜日、土曜日と週3回、それぞれのガレから15人ずつ出て協働している。またRREPで配布された材料はHaro Dubaの手押しポンプの修理に使った。」

 「ブッシュの伐採と柵の補修(Kalo Halake GuyoとKalo Huka Boru)も2週間前に始まっており、Gadaゾニの9ガレ全て(計112世帯)から15人ずつが参加してやはり週3回(火水土)協働しており、既に12ヘクタールをカバーした。新しいエラの建設はまだ始まっていない。」

 「SeleゾニではHaro Charfi Wakoの掘削工事が始まっており、2週間で10m3掘り終えた。Soleゾニの3つのガレから10人ずつが参加している。Kalo Dhadacha Galmaのブッシュ伐採と柵の補修は既に終わっており、3つのガレから25人ずつ参加して行われた。RREPから配布された60kgのローズグラスの種子については、来週種蒔きする予定になっている。新しいエラの建設はまだ始まっていない。」

 「Kubi Annoゾニでは、Haro Tariの掘削が既に終わっており、1ヶ月で52 m3を掘削した。3つのガレ(Gare Kufa Baldhina、Gare Dagagina、Gare Wanga Kufa)から12人ずつ参加していた。Kalo Kubiの柵の補修は既に終わっているが、ブッシュ伐採がまだ終わっていない。これにはゾニの全てのガレが参加している。Ella Kubi Annoの工事は雨のためまだ始まっていない。」

テルテレ郡の村で

 3月30日(土)はテルテレ郡のBule Korma村、Bila村、Jararsa村で話を聞いた。ヤベロからテルテレの町までは車で約1時間半、そしてそこから20〜30分でBule Korma村に達する。Bule Korma村ではまずシェアクロッピングのやり方について聞いた。この辺りは北のコンソ特別郡(南部諸民族州)から来たコンソの人たちが耕作農業をしているが、地主は基本的にボラナの人たちである。

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テルテレ郡Bule Korma村の景色

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テルテレ郡Bule Korma村で話を聞いた人

 「地主が種子や牛や肥料などのインプットを提供する場合は収穫の2/3を地主が、1/3をシェアクロッパーが取る。ただし地主が10ティマド(6 timadが1haなので約1.7 ha)の土地を持っていたとしても1ティマドしかこの方式は取らない。一方、インプットもシェアクロッパーが自前でやる時には、地主が収穫の1/3、シェアクロッパーが2/3となる。」

 「我々のレラ(放牧地の単位)には3つの大きなハロと、たくさんの小さなハロがある。大きなハロはHaro Tumphe、Haro Wasule、Haro Elema Jasoで、Haro TumbeはDERG(軍事調整委員会)政権時代に組合が建設したが、他の2つはコミュニティで建設した。Haro Wasuleは2年前に、Haro Elema Jasoは1年前にNPOのGPDI(Gayo Pastoral Development Initiative)が掘削している。小さなハロのうち家畜用なのはHaro KombochaとHaro Kalkalchaだ。ハロの掘削が必要になった時は、小さなハロの場合はアバ・オラ(集落の長)が、大きな家畜用のハロの場合はジャルサ・レラ(レラの長老)が意思決定する。ハロの掘削や流域保全管理のような協働活動をする時は、通常朝6時から始めて、活動が終わってから農作業など他の作業をする。」

 Bila村でもシェアクロッピングについて聞いた。

 「誰かがシェアクロッピングをしたいと言って来て、自分が種や牛などのインプットを提供するのであれば、収穫の1/3は彼が、2/3は自分が取る。借り手がインプットを出すのであれば借り手が2/3、自分が1/3で、そのやり方をsisoと呼ぶ。自分がインプットを提供する方式は、自分が例え1haの土地を持っていたとしても、1 qarti(qarti = ティマド)だけしか取らない。シェアクロッピングの場合、借り手は耕起、草取りなどをするだけではなく、収穫も自分たちでやる。また借り手が貧しくて収穫を手伝う人たちを雇えない場合は、地主がお金を貸して、収穫が終わって売れるまで返済を待つ。」

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テルテレ郡Bila村の景色

 「Haro Mabaraという大きなハロが1つあり、これはDERG政権時代に建設されたものだ。このハロを我々は人の飲用と家畜用の両方に使っている。もう1つ、Haro Jatani Libanという小さなハロがあり、これは人の飲用専用だ。このハロはJatani Libanが作ったものだ。また流域保全管理プログラムで、新しいハロを作っている。Haro Mabaraの管理運営はレラで行っており、Haro Jatani Libanの管理は利用者である3つのオラ、Olla Yebo Tsegaya、Olla Wario Danfa、Olla Bura Hukaが行っており、掘削もその3つのオラでやっている。」

 Jararsa村の農家で話を聞いた。
 「1ティマドの農地で、通常はインゲンマメ、メイズ、テフを作っている。集落にはシェアクロッピングをしている人たちもいて、地主が種子と牛を提供する場合、地主が8ティマドの土地を持っていたら、1ティマド分の収穫を借り手に渡し、残りを地主が取る。土地は10ティマドあるいはそれ以上のこともある。地主は土地だけを提供し、借り手が種子と牛を出す場合は、地主は収穫の1/3しか取らず、借り手が2/3となる。土地も牛も持っていない人たちが土地も牛も持っている地主の土地でシェアクロッピングする場合、1ティマドだけ地主から借りる。一方、種子と牛は持っているけれど土地を持っていない人たちがシェアクロッピングする場合は、収穫の1/3だけを地主に提供する。」

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テルテレ郡Jararsa村の畑

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テレテレ郡Jararsa村で話を聞いた人

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テルテレ郡Jararsa村で話を聞いた人の家

 「レラにはハロがなく、雨が降っている間は出水を使っている。雨がやんだ後はElla Daresaまで行く。エラまでは歩いて1時間以上掛かる。実はハロも2つあるのだが、集落に近いハロは水が1週間しか持たない。もう1つのハロは遠くて、しかも道路際にあるため、通る人が手足を洗ったりしており、飲むのに適していない。レラで新しいハロを建設するという話は聞いたことがない。ただGara Aanani村では、自分たちでハロを建設しているそうだ。」

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テルテレ郡からヤベロに戻る途中

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テルテレ郡からヤベロに戻る途中

ヤベロ郡の村で

 4月1日(月)にはヤベロ郡の中で一番東にあり、アレロ郡と接しているDikale村の山間の集落で、著名な長老から話を聞いた。

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ヤベロ郡Dikale村の長老

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ヤベロ郡Dikale村での聞き取り風景

 「ゾニで唯一の大きなハロはHaro Dambi Dikaleだが、小さなハロは村の中にいくつもある。加えて我々にはElla Dikaleもある。Ella Dikaleは牛専用で水を飲む順番も厳密に管理されているTulla Ellaと呼ばれる種類のエラではなく、人の飲用にも使え、順番に並んで(first come first served)使うことのできるAddadi Ellaと呼ばれる種類のエラであり、しかもアバ・エラ(Abba Ella、伝統的な井戸の所有者)は我々のゴサ(氏族)Miloだ。乾季には他の村からもElla Dikaleにたくさんの牛が来る。」

 「Adadi Ellaの補修が必要だとなった場合には、エラの近くの長老(レラを代表するジャルサ・レラ)が集まって決めるが、Tulla Ellaの場合は、特別に大きなエラなので、ゴサ(氏族)の代表たちが集まる会議の開催が必要になる。」

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ヤベロ郡Dikale村で水汲みに行く子どもたち

 「Haro Dambi Dikaleは、DERG政権時代にブルドーザーを使って作られたが、他のハロは我々とコミュニティの食料提供(エラやハロの掘削をする場合、近くの人たちは労働で、遠くの人たちは食料提供で協働する)で作った。Haro Dambi Dikaleの利用者は我々の属するレラ(Haro Guyo Charfo Rera)の12のオラに加えて、Dikale村の3つのレラ(Danbala Aba Chana Rera、Horate Rera、Nagella Rera)、Danbala Sadan村の2つのレラ(Hara Hawatu Rera、SIku Rera)、アレロ郡Hallona村の2つのレラ(Danbalota Rera、Midanu Rera)である。レラ(Haro Guyo Charfo Rera)の他のオラは、Haro Muyateの方が近いので通常はそちらを使っている。Haro Dambi Dikaleはシルトが溜まって大きな問題になっており、その掘削はコミュニティの能力を超えている。シルトのためにハロは十分な水を貯めることができず、いまの長雨季(Hagaya Rainy Season)にさえ、牛7日分の水しかない状態である。Haro Dambi Dikaleは13年前にコミュニティによって掘削されたが、SORDU(官製NGO)が2012年の小乾季(Bona Adolessa:6月、7月、8月)にも掘削している。その時は1ヶ月水が持った。Haro Dambi Dikaleのアバ・ヘレガ(水の管理人)はMurku Liben、Kiya Gufu、Dida Saraの3人で、Dambi Dikale ReraのOlla Guyo Jataniにいる。」

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Haro Dambi Dikale

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Haro Dambi Dikale

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Haro Dambi Dikale

「Haro Dambi Dikaleの回りにはよい牧草があるのでたくさんの家畜がやって来る。そのためいずれにせよHaro Dambi Dikaleの水が3ヶ月以上持つことはない。いま我々はオラの近くのHaro Godanaという小さなハロを使っている。どちらのハロも水がなくなったら、ヤベロ郡Darito村にあるHaro Muyateに行く。ここは乾季にたくさんの村のたくさんのオラや使っている大きなハロである。我々はここを家畜用に使っている。また乾季の人の飲水にはElla Dikaleを使っている。」

 「もし人の住んでいないところに新たに大きなハロを作るとなると、たくさんの人が集まって住むようになり、牧草の劣化という新たな問題を引き起こすことになるだろう。したがって私は新たなハロを作るよりも、Haro Dambi Dikaleを掘削した方がよいと思う。Haro Dambi Dikaleまではここから2時間掛かる。このハロは集水域が広く、多くの川が山々を縫って流れ込んでいる。我々にはElla DikaleやHaro Muyateもあるので、Haro Dambi Dikaleが掘削できれば問題はなくなると思う。Haro Dambi Dikaleの工事を外部がやることには問題はないと思う。なぜなら誰もが掘削を望んでいるからである。意思決定には村やアルダの長老、つまり村長(Malicha Simpire)、副村長(Bidu)その他の開発委員会のメンバーの会議が必要なだけである。Haro Dambi Dikaleの掘削についての会議を開くのであれば、12月か1月がよい。」

 「あるNGOが、Webi村、Higo村、Dubuluk村の境界にある大きなハロ(Haro Fullo Bika)の掘削を始めると聞いたが、NGOの名前は知らない。もしそのようなハロの拡張工事が進むのであれば、新しい水源の工事よりも、Haro Dambi Dikaleの問題に焦点を当てた方が、この地域の人々の水不足の解決になると思う。」

 アレロ郡Fulldowa村でも普及員から開発活動の状況について話を聞いた。また道中、プロジェクトで配布した工具を受け取って帰る途中の女性たちを見かけた。

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アレロ郡Fulldowa村の普及員

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工具を受け取って帰る途中の女性たち

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工具を受け取って帰る途中の女性たち

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工具を受け取って帰る途中の女性たち

 「DambiゾニではHaro Bonaya Dikaの掘削が2週間前から始まっており、2つのガレ(Gare Liben Xune、Gare Dika)から15人ずつ参加して協働している。Robaゾニでは、Haro Halakeの掘削が1ヶ月前から始まっており、やはり2つのガレ(Gare Dhaka Warabesa、Gare Badhasa)から15人ずつが協働していた。けれども雨が降り始めてハロに水が貯まったため、工事はストップしている。Qufaゾニではハロの掘削はまだ始まっていないが、Kalo Dhaka Barichaの柵の補修はゾニとして既に始めている。全てのレラでカロの柵の補修は始まっているが、ブッシュの伐採はまだやっていない。RREPで研修した全ての農民たちはメイズの種を正条植えで蒔いた。来週はテフとインゲンマメの種蒔きをする予定になっている。FTC(Farmers’ Training Center:農民研修センター)の回りでは、メイズ、インゲンマメ、テフの優良種子を蒔いており、すべてのレラから週2回、農民が参加している。この活動の目的はすべての村人たちの意識を向上させることにある。」